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2024.2.8
2024.3.7
青みを帯びた紫色が美しく、その色合いから連想される可憐な花の名がつけられたアイオライト。その性質からミステリアスな特性を持ち、人々を魅了してきた宝石です。
3月の新誕生石に加わったことで注目を集めているアイオライトはどのような性質があり、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか?宝石の特徴や意味、ヨーロッパに伝わる伝説、アイオライトのジュエリーの選び方から、その魅力をひも解いていきます。
アイオライトはコーディエライトという鉱物の一種です。コーディエライトの中でも宝石質の濃紫青色のものがアイオライトと呼ばれています。
和名は菫青石(きんせいせき)。日本でも馴染み深い花である菫(スミレ)の文字が使われていますが、宝石もスミレの花のような青みを帯びた紫色が特徴的な宝石です。
アイオライトの特性であり最大の魅力は多色性です。多色性とは、見る角度によって色が変わる性質のこと。これはアイオライト結晶の方向によって、光の吸収の仕方が異なるために起きる現象です。
青紫のアイオライトが灰黄、淡青色へ、さらに角度を変えると無色へと変わっていく様子はまさに神秘的。色が似たブルーサファイアの鑑別では、多色性のあるなしでアイオライトと判別されます。
アイオライトの名前の由来もその色です。ギリシャ語で紫を意味するios(イオス)と、石を意味するlithos(リソス)が組み合わさったものだといわれています。
ブルーサファイアに似た色合いで川の砂利の中から見つかることから、ウォーターサファイアという別名もあります。
アイオライトの石言葉は「道を示す」「貞操」「誠実」「愛を貫く」です。
「道を示す」という石言葉通り、進むべき道に迷った時の道しるべとなる「ビジョンの石」であり、内なる眼を開かせ、直感力を高めてくれると考えられています。
ヨーロッパでは結婚する娘の幸せな生活を願ってアイオライトを贈るという風習がありました。
アイオライトは3月の誕生石のひとつで、2021年12月の誕生石の改訂で新たに仲間入りした新誕生石です。
アイオライトの鉱物名であるコーディエライトの由来となったフランスの鉱物学者、ルイ・コルディエの誕生月が3月だったことから、3月の誕生石に選定されました。
3月の誕生石にはほかにも、ブラッドストーン、珊瑚、アクアマリンがあります。なぜひとつの月に複数の誕生石があるのでしょうか?
誕生石はそもそも、旧約聖書に出てくるイスラエルの祭司長の胸当てにはめ込まれた12種類の宝石からはじまり、その後西洋占星術に取り入れられ、現在の誕生石が作られました。
天体の位置を示す「黄道十二宮」に12の宝石が配され、天頂にある星座を象徴する宝石の力がもっとも強くなると信じられていたことが由来になったといわれています。
その後誕生石の風習はさまざまな国に渡り、国によって宝石が変わったり、増えたりしながら、多くの人に親しまれています。
宝石が複数あるのも、選択肢を増やすことで宝石への関心を高めてもらいたいという願いからです。気負うことなく、いいな、好きだなと感じた宝石を守護石として迎えてあげてください。
ここからは3月のほかの誕生石も少しだけ紹介していきましょう。
透き通るような淡いブルーが、海を思わせるアクアマリン。
夜の闇の中でもわずかな光を受けて煌めく姿から「人魚石」や「夜の女王」と呼ばれ、中世ヨーロッパの夜会では女性たちがこぞって身に着けていたといわれています。
贈った人も贈られた人も幸せになれるという言い伝えから「天使の石」とも呼ばれています。
アクアマリンについて詳しく見る
真珠と同じ有機質の宝石で、海の生き物の骨格を加工してできたものが珊瑚(コーラル)です。
日本も、世界から認められている美しい宝石珊瑚の産地のひとつで、高知県沖や日本近海の小笠原列島や五島列島、奄美、沖縄、宮古島周辺で採取されています。
長い年月をかけて育つその性質から強い生命力を象徴し、厄災や病魔を払うお守りとして愛されています。
珊瑚について詳しく見る
深いブルーやグリーンの地色に、まるで血が飛び散ったような斑点模様がミステリアスなブラッドストーン。ブラッドストーンも今回の改定で新たに加えられた誕生石です。
十字架にかけられたキリストの血が飛び散って生まれたという逸話から、キリストの血を浴びた聖なる石として崇められていました。
強力な浄化作用を持ち、負を跳ね除け、勇気と心身の強さをもたらしてくれるといわれています。
ブラッドストーンについて詳しく見る
「道を示す」という石言葉をもつアイオライトですが、ヨーロッパでは実際にバイキングの船乗りたちがコンパス代わりに使っていたという言い伝えがあります。
当時はまだ磁気コンパスがなかった時代。バイキングたちは「太陽の石」と呼ばれるものを使って太陽の位置を特定し、航海を行っていたそう。
その「太陽の石」がアイオライトなのかは定かではありませんが、曇りの日にはアイオライトの薄片をフィルター代わりにし、太陽の位置を確かめていたという伝説が残されています。
アイオライトの産地はスリランカ、インド、カナダ、ミャンマー、マダガスカルなど。とくにマダガスカル産は発色が良く、上質なものは透明度も高いです。
インド産も有名でサイズが大きく、光を当てると星の形が浮かび上がるスターアイオライトが採れることもあります。
アイオライトの色合いや変化をいつも楽しみたいという人は、ジュエリーを探してみてはいかがでしょうか。
ジュエリーを選ぶ際に気を付けたいのは地金の色です。アイオライトのジュエリーは、絶妙な色合いを引き立ててくれるプラチナの地金がおすすめ。プラチナの落ち着いた白色と控えめな輝きは、繊細な色の変化を楽しみたいアイオライトに最適です。高貴な白色はアイオライトのジュエリーに上質感と、知的な印象を与えてくれます。
アイオライトはモース硬度7.0~7.5と水晶と同等の硬さがありますが、熱に弱く、高温や急激な温度変化を伴う環境下では割れてしまうことがあります。
また一方向に割れやすい性質があるため、強い衝撃にも注意が必要です。ジュエリーはぶつけるリスクが少ないネックレスやイヤリングで楽しむのがおすすめ。
普段のお手入れは外した後、柔らかい布で拭く程度で大丈夫です。水には強いため、汚れや曇りが気になった場合は中性洗剤を溶かしたぬるま湯に浸し、柔らかい歯ブラシで汚れを落としてください。
洗浄後は柔らかい布で水分を拭き取り、しっかりと乾かしてからジュエリーボックスなどに単体で保管しましょう。
航海の道しるべとして、悩める人々を進むべき方向へ導いてきたという伝説をもつアイオライト。壁にぶつかった時や進むべき道に迷った時、お守りとして身に着けてみれば、何かヒントをもらえるかもしれません。
ヨーロッパの風習に倣い、結婚のお祝いとして贈るのも素敵ですね。多色性をもつアイオライトのように、日々がさまざまな煌めきで彩られますように。
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